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伊豆在住ライター小林ノリコの伊豆グルメ情報+∞ (仮)

毎週火・木曜更新。 covanonwriting.themedia.jp/

先入観だけで悪い印象を持っていた相手に会った結果…

取材こぼれ話

直接会ったことがない、その人の本質が分からないのに勝手な悪意を持ったり、思い込みや憶測だけで人の悪口を書いたり言ったりしない。

ライター/編集者の仕事を始めてから、このことを常に心の片隅に置くようにしています。

 

そりゃ、私だってそれなりに年齢を重ねてきたし、インタビュー取材で多くの方に接してきたから、あまり良くないオーラが漂ってる人は、直接会わずとも、人となりが何とな~く分かってしまう。

でも、やっぱり実際にお目にかかって話を聞いたり、直接話をしてみないと、その人が本当はどんな人かなんて分からないものなんですよね。

過去に、インタビュー取材で実際に話してみて、印象がすっかり変わった人なんて数え切れないほどいますから。

 

私が東京の編集プロダクションに勤めていた頃。今からもう15年以上前の話になります。

まだ20代前半だった私は、第一線で活躍しているライターさんの仕事から少しでもプロのテクニックを学び取ろうと、自分の仕事ではないのに、いろんなライターさんのインタビュー取材に同行させてもらっていました。
 
ある日、某ロック・ミュージシャン(以下Aさんとします)のインタビューに同行させていただく機会がありました。でもね、私、その頃はAさんに対してあんまり好感を持っていなかったんですよね。その理由はただ一つ。
 
「メジャーデビューしたら路線をガラリと変えやがって‼︎」
 
そう。完全に私怨でございます。若かったね、私。ただのいちリスナーで、ライヴを何度か観て雑誌インタビューをチラ見しただけ。その真意を知ろうともせず、実際に会ったことも話したこともないのにね。
で、何であんまり好きでもないのに同行したのかというと、
 
「この日和見野郎(酷っ!)がどんだけイヤなやつなのか、アタイのこの目でじっくりと見届けてやるんだからな‼︎」
 
っちゅー汚ねえ動機。しかも見届けるだけっていうヘタレっぷり。まったく、イヤなやつはどっちだよ!って感じ。若い時のわけわかんないエネルギーって怖いわ(苦笑)。
 
会議室に入ってきたAさんは、音楽誌のグラビアで見るような、斜に構えた厳つい雰囲気ではありませんでした。
意外なほどにこやかで、とても柔らかい空気をまとった方。インタビュアーであるベテランの音楽ライターさんと旧知の仲だったようで、とてもリラックスした雰囲気の中でインタビューが始まりました。
ニュー・アルバム発売後の全国ツアーについて話を聞いたんだけど、本当に、とても良いインタビューだったんですよ。
 
「地方の小さな街に行くと、CDショップ自体を見つけるのも大変なんですよ。やっと小さなショップを見つけて店に入ると、日本のロックの棚に置いてあるCDの(タイトル)数がとても少ない。やっと俺たちのアルバムが1枚見つかるくらいなんですよ。それなら俺は、そんな小さな街に住んでいるロック少年たちの心を震わせるようなものを作りたいと思った」
 
要約すると、ざっとこんな内容でした。文字数の関係で、そのコメントはカットされてしまったんじゃなかったかな。でも、その時のAさんの真摯な話しぶりは、今でもはっきり覚えています。
「ああ、この人は音楽に、本当に真剣に向き合ってるんだ」と感じたし、心から音楽を愛しているリスナーのことを真面目に考えているミュージシャンなんだと感じました。
 
同時に、 はなから「日和見野郎」「裏切り者」呼ばわりしていた、自分の浅はかさをとても恥ずかしく思いました。
 
中高生の頃は、インディーズ・バンドのアルバムやカセットテープ音源の情報を、先輩や文通仲間から苦労して手に入れたり、雑誌の通販でアルバムを購入したり。インターネットがない時代だったから、試聴なんてできない。噂と雑誌のレビューとおのれの勘を頼りに、清水の舞台から飛びおりるような気持ちで買っていたわけで。
 
まさにそのコメントに出てきたような、田舎の小さな街のロック少女だった私は、Aさんの言葉にいたく感動したのでした。ホント、単細胞なヤツですみません(笑)。
 
そのコメントを聞いて「いい人ぶりやがって!その言葉の裏に何かあるぞ」と、あまのじゃくな考えに至らなかったのは、Aさんの真摯な話しぶりもあったのだろうけど、ライターさんの質問の仕方だったり、ぶっちゃけて話せるような空気が、その場にきちんと作られていたからかもしれないですね。
 
インタビュー取材って準備が大変だし、取材中の舵取りや原稿をまとめる作業もすごく難しいけど、会話の最中に「ここだ!」とキモを掴んだ瞬間が醍醐味。だから、今となっては、インタビューは大好きな仕事のひとつになっています。